f/q交換日記
近藤銀河さん、瀬戸マサキさん、水上文さんと交換日記をすることになりました! それぞれのニュースレターを横断しながら行う企画です。ぜひ、他の3人のニュースレターも購読してみてください。

水上さん、こんにちは! 初回の交換日記、引っ越しからパレードの話まで楽しく読みました。交換日記がはじまるの、自分もわくわくしてましたよ〜。
読みながら、自分も今年の6月はプライドマンスらしいことをたくさんしたなあと改めて振り返っていました。
近年、東京のパレードは(どの都市も多かれ少なかれそうだろうけど)商業主義が強くなっていて、お金のある企業がコミュニティでずっと活動している当事者の団体よりも目立ってしまう状況を批判されていた。加えて2024年はガザでの虐殺が行われている中、イスラエルを支持する企業の出展が問われ、多くのクィアが抗議の意味を込めてパレードをボイコットしていた。
こうした流れの中で自分もパレードというものへの不信感、失望感がかなり強くなっていたんだけど、今年は変化の兆しもあったと思う。直接的な明言はなかったもののBDS対象企業(イスラエル支持企業の中で、ボイコット・投資引き揚げ・制裁の優先順位が特に高いもの)がスポンサーから外れ、関連プログラムにも当事者主体のものや人権を重視したカンファレンスが増えた印象。まだ様々な課題はあるにせよ、「ハッピーなお祭り」だけにしない姿勢が感じられたことは、素直によかったと思う。
そして、場があることをひとまず肯定してみようという気持ちになったことは、自分にとってもよかった。連帯できるはずの人と鋭く対立していたのを、少し緩めることができた気がした。
今年パレードに参加して思ったのは、私は「ハッピープライド」そのものというより、「ハッピーなだけのプライド」が嫌だったんじゃないかということ。差別の嵐が吹き荒れる社会だし、怒ることは忘れてはいけない。だけど喜びにも価値はあって、それを感じることで生き延びられる時もあるから。
怒ることと楽しむことは二項対立的に捉えられがちだけど、両方を同時に、あるいは往復しながら表現することもできるよなーと、最近は考えている。実際、二つが混ざり合うことも少なくないし。痛烈な批判をキレのいいコールで叫んだら気分が高まってきたりとか。なんか今日いい日だったなーと思う一日が、そうあれない日やそうあれない人の状況を変えていくための力になったりとか。
書きたかったことがもう一つ。少し時間をさかのぼって、水上さんから交換日記が届いた時のことです。東京は6月28日の20時過ぎで、私はドラァグクイーンのマダム・ボンジュール・ジャンジさんの『HUGたいそう』という、ハグを通して身体の権利や同意についても学べる本のトークイベントの帰り道でした。本にはみんなでHUGたいそうをするページがあるけど、近藤さんも写ってましたね!
トークのゲストは造形作家の大塚隆史さん(タックさん)と、保育士で作家の末浪伸二さん。タックさんと伸二さんは20年来のパートナーで、日本での同性婚が夢のまた夢の話だった頃に養子縁組をして家族になっている(今は「夢の話」くらいまでは近づいてきてるかな)。
トークでは、77歳のタックさん、50代の伸二さん、その間くらいのジャンジさんが、どんなふうに自分のジェンダーやセクシュアリティのアイデンティティを築いていったかが話されていた。
ジャンジさんはまだ性別適合手術やホルモン治療などの情報がほとんどない時代に違和感を感じながら10代を過ごし、ファッションやダンスに出会って自分を表現することで生きていく術を見出した。その中で、ドラァグクイーンとして女性性をカリカチュアする表現も身につけていった。
タックさんが思春期を過ごしたのは1960年代で、やっぱり情報が全然なかった。6月がプライドマンスと言われているのは1969年のストーンウォール・インの蜂起に由来するけど、それよりも前の時代。高校生の時、本屋で『Homosexual Explosion』という洋書を見つけて、そこからゲイリブの思想を身につけていった。
一方で伸二さんが10代の頃はタックさんとはまた状況が違って、90年代初頭には「ゲイブーム」もあった。「ちょっとおしゃれなものとして雑誌で紹介されることもあったから、意外とそんなに気にせず友達にも言ってた」と話していた。
あと、タックさんは数年前にノンバイナリーという言葉に出会って、自分がそうだと思うようになったとも話していた。ゲイとしてずっと運動にも関わってきたけれど、その属性にずっと自分の女性性の置き場のなさみたいなものを感じていたのだと。「これも男性の多様性」と自分を納得させていたけど、そうじゃなくてノンバイナリーと言った方がしっくりくると気づいたと言っていた。
はじめて聞く話もそうでない話もあったけど、改めてその性/生を生きてきた人が自分自身で語る言葉には、説得力があった。「みんなほんとに色々だな……!」と感動した。なんか急に語彙力ない感想だけど……。時代や場所や属性によって、個人の感じ方によって違う一人ひとりの経験を、もっと知りたくなった。そして、自分も一個人としての言葉でちゃんと話したいなと思った。
この交換日記でも、そういう話ができると良いな。誰かと言葉を交換することで、自分ひとりでは考えなかった問いと出会うこともあると思う。楽しみです!
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